北海道医療大学薬学部 特任教授
(公財)日本アンチ・ドーピング機構 公認ドーピングコントロールオフィサー
(公社)日本薬剤師会アンチ・ドーピング委員会委員
(一社)日本臨床栄養代謝学会 NST専門療法士
(一社)日本体力医学会 健康科学アドバイザー
(公財)北海道スポーツ協会 スポーツ科学委員会委員
(一社)北海道薬剤師会 アンチ・ドーピング特別委員会委員
1994年に広島で行われたアジア大会での中国水泳チームのドーピング疑惑をきっかけに、薬剤師として実際にスポーツ現場でアンチ・ドーピング活動に関わるようになりました。それ以来、様々な競技団体・競技大会などでアンチ・ドーピング活動を行っています。
北海道体育協会では、もう何年も前から毎年、国体に行かれるアスリートあるいは指導者に対してアンケートを実施しています。その結果、「薬局で薬を購入する時にどのようにして薬を買いますか?」という質問に対し、7割以上のアスリートが「薬剤師に相談して購入する」と回答しています。つまり、アスリートは薬局に行って、薬剤師に相談すれば、絶対正しい答えをくれると思っているのです。多くのアスリートは、「薬剤師だったら知っているだろう。知っていてほしい」という期待があり、これに対して私たち薬剤師は応えていかなくてはならないと思います。
実際に薬剤師としてスポーツ現場で、どんな活動をしているかというと、大きくわけて2つあり、まずは医療スタッフとしての活動があります。例えば、医薬品の整備、薬品、医療材料の準備、医薬品情報の提供、薬の相談、医療支援、どうしても薬を使用しなければならないときに申請する治療使用特例(TUE)の対応などをしています。実は、私も最初は医療班としてスポーツ現場に参画していて、救急車に乗って医療活動をしたこともありますし、長野オリンピックでは、日本選手団の医務室に勤務していました。そして、アンチ・ドーピング活動としては、ドーピングコントロールといったドーピングを抑止するための検査や、薬の相談、講演などによる啓発活動などを行っています。 薬の情報相談ということで、北海道体育協会のホームページに上記のような用紙があります。アスリートや指導者が相談したいことがある場合、この用紙をFAXやメールで体育協会に送ります。送られますと、365日、私の携帯の方に連絡が入り、私か担当のドクター、もしくは北海道大学病院の医薬品情報室のスタッフが、これに対応するという体制をとっています。
また、広い意味でのアンチ・ドーピングということで、検査や情報提供だけではなく、健康管理・栄養管理まで含まれてくるのではないかと思います。
リュージュ競技では、ナショナルチームの海外遠征に同行して、食事の果てまでチェックすることもあります。海外遠征に限らず、なぜそこまで関わっているのかというと、アスリートのサプリメント使用が気になったからです。まずは、食事ではないかと。そこで、アスリートの口に入るものを管理栄養士と一緒にチェックすることから始めて、栄養バランスやカロリーなどのアドバイスも含めて、まずは食生活をきちんとしようと。さらに、海外遠征においては、食事事情が違いますし、日本食でないと生活ができないというアスリートも中にはいるので、日本から乾燥物やレトルト食品などを持参する場合もあります。また、食の安全ということで、サプリメントなども混入していないか、海外で購入したものが実は日本とは全く違う成分で、薬物のようなものが入っている可能性もあるためできる限り情報を収集するよう努めています。薬剤師として、介入しようとするとこのようなこともできるのではないかと思います。
薬剤師は、非常に客観的に、冴えた頭で、また温かい気持ちで、客観的な情報を提供できます。よく病院でも「薬剤師ってどこにいるんだろう?」と質問されて、薬剤部や薬局というのはもうご法度の時代で、私としては、「薬剤師はどこにでもいます」と答えています。
まずは、薬剤師の方に、スポーツを観ていただいて、スポーツに興味を持っていただけたらと思います。さらにもう一歩進んで、このようなアンチ・ドーピング制度や資格の問題だけではなく、業務のひとつとして知っているのが当たり前という状況が是非生まれていただければと思います。
今回の「公認スポーツファーマシスト認定制度」は、これらのきっかけになるのではないかと期待しています。
(公財)日本アンチ・ドーピング機構 公認ドーピングコントロールオフィサー
(一社)岩手県薬剤師会 常務理事
(一社)岩手県薬剤師会 学校薬剤師部会 副部会長
(公財)岩手県体育協会 スポーツ医・科学委員
(公財)日本スポーツ協会 公認スポーツプログラマー
(公社)日本薬剤師会アンチ・ドーピング委員会委員
2003年第58回New!わかふじ国体(静岡)からドーピング検査が実施されるようになり、岩手県薬剤師会でもこれを受け、「ドーピングは薬の問題。だから薬剤師がやるべき仕事」 として取り組みました。私は、岩手県体育協会スポーツ医科学委員会のメンバーとして活動しています。体協のスポーツ医科学委員に薬剤師が入っている例は、 全国でも少ないケースと思います。
私自身も最初は、アンチ・ドーピングについてどのような活動をすべきかわからなかったため、その基本的な情報を得るためにスポーツ現場へ参加したり、 ドクターやトレーナーに協力いただきました。また、アンチ・ドーピング活動を通じて、他の薬剤師の方々がさまざまな活動をしていることも知りました。 アンチ・ドーピング活動はまさしく薬剤師ができる活動です。
今回、「公認スポーツファーマシスト認定制度」で、アンチ・ドーピングに関する基礎的知識が学べることはとても良いことと思います。 また、このような知識を得ることで、新しい分野や今までとは違う環境で活躍ができる…。これは、これから薬剤師になる方々に活躍の場を広げることができます。 薬剤師が薬局の中で医療に携わることは大前提で、それ以外のさまざまなシーンで活躍する場はあります。 その選択肢のひとつとして、スポーツファーマシストがあると思います。
私自身スポーツをしていました。この経験と薬剤師としての知識を、アンチ・ドーピングの活動で生かしていきたいと思います。 そして、スポーツを通じて、これからの薬剤師の方々の活動の場も広がってほしいと思います。私もスポーツファーマシストとしての活動の場を、 さらに広げることに取り組みたいと思います。